闘技場年代記
五十嵐一輝&バイス/仮面ライダーリバイ&仮面ライダーバイス VS the great ronin
硝烟の匂いが、まだ新しい。 崩れかけた立体駐車場の最上階。鉄筋が剥き出しになった床の上で、五十嵐一輝は膝をついていた。肺の奥が焼けるように熱い。隣では、黒い悪魔——バイスが尻尾をだらりと垂らし、珍しく黙り込んでいる。 「……なあ、一輝」 「ああ」 「あのジジイ、マジで人間か?」 答えられなかった。答えられないまま、一輝は顔を上げる。…


登場キャラクター
硝烟の匂いが、まだ新しい。
崩れかけた立体駐車場の最上階。鉄筋が剥き出しになった床の上で、五十嵐一輝は膝をついていた。肺の奥が焼けるように熱い。隣では、黒い悪魔——バイスが尻尾をだらりと垂らし、珍しく黙り込んでいる。
「……なあ、一輝」
「ああ」
「あのジジイ、マジで人間か?」
答えられなかった。答えられないまま、一輝は顔を上げる。
吹き抜けの向こう、階段の踊り場から最上階へと続く最後の一段。そこに、the great roninは立っていた。白髪を後ろで束ね、白い髯を胸まで垂らし、黒い目隠しを巻いた老人。深緑と黒の鎧に金の縁取りが鈍く光る。腰には太い縄帯で固定された刀。抜いていない。この三十分、一度も抜いていない。
それでも、二人はすでに七度、地面に叩きつけられていた。
「見えていないはずなのに」とバイスが低く唸る。「俺っちたちの動き、全部読まれてる。気持ち悪いったらありゃしない」
「読まれてるんじゃない」一輝は立ち上がりながら言った。「先に置かれてるんだ。俺たちが動く場所を、あの人が先に決めてる」
最上階は見通しがいい。だが、その見通しのよさが罠だった。平面での打ち合いでは、あの老人の「間」がすべてを支配する。一輝は悟っていた。この階で戦う限り、自分たちは永遠に相手の土俵に乗せられる。
ならば——高さを変える。
「バイス」
「おう?」
「降りるぞ。踊り場まで一気に。あっちの間合いを、階段の幅で潰す」
バイスの青い複眼が瞬いた。「いいねえ。狭いところなら、あの刀も振り切れないだろ」
一輝はデニムジャケットの内ポケットから、リバイスドライバーを取り出す。バイスも同時に、己のベルトへ手をやった。
「変身!」
「変身!」
二人の声が重なる。ピンクとスカイブルーの装甲が、ティラノサウルスの意匠を纏って一輝の身体を包む——仮面ライダーリバイ。黒とピンクの異形の装甲が、長い尻尾と尖った耳を揺らしてバイスの全身を覆う——仮面ライダーバイス。オーイングバスター50が、バイスの手に重い音を立てて収まった。
老人は動かなかった。ただ、髯の下で、ごくわずかに口元が動いた。笑ったのか、そうでないのか、わからない。
「よい」
しわがれた、ゆっくりとした声。地の底から響くようだった。
「その目、まだ死んでおらぬな」
その一言が終わるより先に、リバイは駆け出していた。地面を蹴り、吹き抜けの縁へ。バックスに続いて、二人は一斉に最上階から踊り場へと跳んだ。数メートルの落下。空中でバイスがオーイングバスター50を振り上げ、着地と同時に斬りかかる構えを取る。
だが、老人はもうそこにいなかった。
「——上か!」
リバイが叫んだ瞬間、頭上から白い髯が翻った。the great roninは吹き抜けの梁に足をかけ、真下へと落ちてくる。刀は抜かない。鞘のまま、その一撃がバイスの斧銃を打ち据えた。
金属と木鞘がぶつかる、鈍い音。バイスの体が階段の手すりをへし折り、壁に叩きつけられる。
「バイス!」
「まだまだ!」バイスは尻尾で壁を叩き、反動で跳ね返る。「ジジイ、抜けよ! 刀を抜けったら!」
老人は踊り場に静かに着地した。膝をほとんど曲げない。重力を僭称するような、滑らかな降下だった。
「抜かねば、届かぬか」
「抜かなくても、あんたには届いてないよ」リバイが低く言う。「それが腹立たしいんだ」
老人は首をわずかに傾けた。目隠しの下で、何かを見ているような仕草。
「おぬしらは、強くなろうとしておる。それは美しい。だが、わしはもう、強くなる必要がない。死を越えた身には、勝つ理由も、負ける理由もない。ただ、そこにあるだけだ」
「そんなもん、戦う理由にならないだろ」一輝の声が、変身後の装甲越しに軋む。「理由がなくても、俺は守りたいものがあるから戦う。あんたは、何のために刀を持ってる」
老人は答えなかった。代わりに、初めて、鞘から親指一本分だけ刀が抜かれた。
その瞬間、階段の空気が変わった。冷たい、研ぎ澄まされた何かが、空間そのものを薄く削いでいくような感覚。
「来るぞ、一輝!」バイスが叫ぶ。
老人は動いた。驚くほど遅く見える一歩。だが、その一歩はリバイの間合いの内側に、すでに完成していた。鞘走りの音が、遅れて響く。リバイは胴を薙ぐ斬撃を、オーイングバスター50の柄で受け流そうとした。
受け流せなかった。
刃は柄を滑り、装甲の表面を浅く裂いた。火花が散る。リバイの体が回転し、階段の一段下へと弾かれる。
「一輝!」
バイスが斧銃を水平に構え、突進する。オーイングバスター50の銃口が火を噴く。だが老人はすでに銃口の線上から外れていた。弾丸は踊り場の壁を穿ち、粉塵を撒き散らす。その粉塵の中を、白髪が縫うように進む。
鞘の一撃が、バイスの腹を捉えた。内臓を揺らすような衝撃。バイスの黒い装甲に、鈍い亀裂が走る。
「ぐ……っ、この!」
バイスは尻尾を鞭のように振るった。老人はそれを跳び越え、跳び越えた先の壁を蹴って、また跳ぶ。垂直の壁面を、まるで平地のように。踊り場の天井近くまで達した老人は、そこで一度静止した。
その静止が、すべてだった。
リバイとバイスは、二人同時に理解した。この老人は、高さを取ったのではない。逃げたのでもない。ただ、次に来る一撃の角度を、「決めた」のだ。
「バイス!」リバイが吼える。「合体技だ! レックススタンピングフィニッシュ!」
「待ってました!」
二人は階段を蹴り、左右から老人へと迫る。リバイの拳と、バイスの斧銃。二つの軌道が交差する一点——老人の胴——へと収束していく。ティラノサウルスの顎を模したエネルギーが、リバイの脚に、バイスの斧に、同時に宿る。
老人は天井から、静かに落ちてきた。
落ちながら、刀を抜いた。
抜刀の音は、しなかった。音より速く、刃がそこにあった。深緑の鎧が舞い、白い髯が風を切る。老人の一閃は、リバイの拳とバイスの斧の「間」——二人の攻撃がまだ重なっていない、ほんの一瞬の隙間——を正確に通り抜けた。
そして、二人の必殺技は、空を斬った。
リバイの拳は床を砕き、バイスの斧は手すりを断ち切った。だが、老人の体は、もうそこにはなかった。老人は二人の背後、階段の最上段に立っていた。刀を、静かに鞘へ戻す。
「……なぜ」リバイが息を切らして振り返る。「なぜ、当たらない」
「おぬしらの力は、本物だ」老人の声は、驚くほど穏やかだった。「だが、二人で一人になる瞬間、おぬしらは互いを信じすぎておる。信じるあまり、相手の動きを『見て』おらぬ。わしは目が見えぬから、見えぬ者の戦い方を知っておる。おぬしらは、見えるのに、見ておらぬ」
一輝は、はっとした。これまでの七度の敗北。そのすべてが、二人の呼吸が完全に一致した瞬間に訪れていた。息を合わせようとするあまり、相手の「ずれ」を無視していたのだ。
「バイス」
「……ああ、わかってる」バイスは斧銃を下ろし、肩で息をする。「俺っちたち、仲良すぎたってことか。笑っちゃうよな」
「笑い事じゃない」一輝は顔を上げた。「でも、直せる」
老人は動かなかった。ただ、待っていた。まるで、二人が何を選ぶか、見届けるように。
一輝は、呼吸を整えた。バイスも、隣で同じように。二人はもう、息を「合わせ」なかった。それぞれが、それぞれの呼吸で、それぞれの間合いを測る。リバイは左足を引き、バイスは右肩を前に。あえて、ずらす。
老人の髯が、わずかに揺れた。初めて、その姿勢に「反応」が生まれた。
「……おもしろい」
リバイが跳んだ。直線ではない。踊り場の壁を蹴り、天井近くを走り、斜め下へ。バイスは逆に、床を這うように低く、斧銃を引きずりながら前進する。二つの軌道は、もう交差しない。交差しないまま、同じ一点——老人の左右——へと迫る。
老人は、迷った。
それが、すべてだった。
一瞬。ほんの一瞬、老人の重心が、どちらの攻撃を先に処理すべきか、判断に揺れた。目隠しの下の「視界」が、二人の異なる動きを同時に捉えきれなかったのだ。
リバイの拳が、老人の右肩を打った。バイスの斧銃が、老人の左膝を斬り上げた。
「ぐ……!」
初めて、老人の口から声が漏れた。深緑の鎧が軋み、白い髯が乱れる。老人の体が、階段の途中で止まった。膝が、わずかに沈む。
「いまだ!」リバイが叫ぶ。「もう一回だ、バイス!」
「言われなくても!」
二人は、今度は息を合わせなかった。合わせる必要がなかった。それぞれが、勝手に、しかし完璧に、老人の逃げ道を塞いでいく。リバイは上から、バイスは下から。老人が跳べばリバイが待ち、老人が潜ればバイスの尻尾が薙ぐ。
剣士は、追い詰められていた。踊り場という閉鎖空間が、彼の「間」を奪っていた。広い最上階では、あの老人は無敵だった。だが、狭い階段では、その完璧な一歩の「余地」がない。
「なぜ……抜かぬ」一輝が息を切らして問う。「あんた、まだ本気じゃないだろ」
老人は、膝をついたまま、静かに笑った。
「本気を、出す理由が……今、生まれた」
その瞬間、老人の体から、空気が変わった。冷たい何かが、鎧の隙間から溢れ出す。死を越えた者の気配。神の届かぬ領域の、静かな圧。
老人は、刀を抜いた。今度は、音がした。
悲鳴のような、鞘走りの音。
老人は、立ち上がった。膝に受けた傷を、まるで感じさせない。目隠しの下の「目」が、確かに二人を見ている。
「よいか、若人。これが、わしの……最後の一閃だ」
リバイとバイスは、同時に構えた。もう、ずらさない。今度こそ、すべてを賭ける。
老人は、踊り場の中央で、静かに刀を構えた。
そして、踏み込んだ。
その一歩は、遅かった。だが、遅さの中に、すべての速さが畳み込まれていた。刃が、リバイとバイスの「間」——しかし今度は、二人がずらしたその隙間を通り抜けようとする。
一輝は、見た。老人の刃が、自分とバイスの「ずれ」を読んで、そこを狙っている。ならば——ずれを、消す。
「バイス!」
「ああ!」
二人は、跳んだ。同時ではない。リバイが先、バイスが後。だが、空中で、二人の体が重なった。リバイの拳が、バイスの斧銃を打つ。その反動で、バイスの斧が加速する。重なった二人の攻撃が、老人の刃と、真正面からぶつかり合った。
金属が、悲鳴を上げた。火花が、踊り場を白く染める。老人の刃が、バイスの斧銃を切り裂き、リバイの装甲を裂き——だが、その刃は、リバイの拳の先で、止まった。
一輝の拳が、老人の胸甲を打ち抜いていた。
老人の体が、後ろへと倒れる。深緑の鎧が、階段の一段、また一段と、崩れるように沈んでいく。白い髯が、床に散った。刀が、老人の手から離れ、階段を滑り落ちて、下の階へと消えた。
静寂。
硝煙だけが、ゆっくりと立ち上る。
老人は、床に横たわったまま、動かなかった。だが、息はあった。浅く、しかし確かに。
「……見事」しわがれた声が、天井へ向かって漏れる。「わしは……負けた。死を越えた者が……若者の、生の力に……負けた」
一輝は、膝をついた。バイスも、その隣で、尻尾を床に投げ出した。
「……勝った、のか」バイスが、掠れた声で言う。「俺っちたち」
「ああ」一輝は、老人を見下ろしながら、静かに頷いた。「勝ったんだ」
老人は、もう動かなかった。だが、その髯の下で、満足げな、静かな笑みが浮かんでいた。
一輝は、立ち上がった。崩れた踊り場の縁から、朝の光が差し込んでいる。夜が、明けようとしていた。
「バイス」
「なんだよ」
「帰ろうぜ。家族が、待ってる」
バイスは、しばらく黙っていた。そして、尻尾をぴんと立てて、いつもの調子で言った。
「おう。帰ったら、風呂入って、飯食って、寝る! 俺っち、もうヘトヘトだ!」
二人は、階段を降り始めた。老人は、その背中を見送るように、静かに目を閉じた。
死を越えた剣士と、生を抱えた二人の英雄。その戦いは、朝の光の中に、静かに幕を閉じた。
記録された結末
この戦いで最後に立っていたのは 五十嵐一輝&バイス/仮面ライダーリバイ&仮面ライダーバイス でした。
この架空の物語は、プレイヤー作成キャラクターと公開バトルをもとに PicWar AI が娯楽目的で生成したものです。この結末を書き換えますか?
五十嵐一輝&バイス/仮面ライダーリバイ&仮面ライダーバイス に挑むヒーローを作ろう。
スケッチや画像から PicWar でヒーローを作り、新しいバトル物語へ送り出しましょう。


